(人の暮らせぬ地でイノシシが草をはむ)
福島第一原発と処理水。
〜敷地いっぱいのタンクに日本の先送り政治をみる〜
福島、ファーストインプレッション松井一郎大阪市長が
「科学的根拠から安全性が確認されれば
大阪湾での受け入れもあり得る」
と発言したことで
膠着状態だった貯蔵問題に
動きが出てきた福島原発の処理水。
10月1日、
処理水・中間貯蔵施設の現状を理解し
今後の解決策を探っていくため、
日本維新の会の国会議員団で
福島第一原発を視察してきました。
また、視察翌日の10月2日には
資源エネルギー庁原発事故収束対応室や
原子力規制委員会から官僚の方々から
現状のレクを受けました。
私も議員1年生ながら視察に参加。
震災復興特別委員会の委員として
原発問題がクリアにならなければ
被災地が復興したとは言えない。
処理水や汚染土をめぐる課題解決は
震災復興にとっても不可避だと考え、
現場を確認させていただくことにしました。
東京駅から新幹線とバスを乗り継いで3時間。
緑豊かな自然とともに現れたのは
雑草が伸び放題の田畑
子どもの気配が感じられない保育園
畜産業を営んでいたらしい建物の残骸
主人のいなくなった家にからむツタ…
いまだ「復興」には程遠い福島。
それが私のファーストインプレッションでした。
戻らない住民たち
福島第一原発は福島県大熊町と双葉町に
またがって建設されていて、
双葉町はいまだに
町全域が帰還困難区域に指定されています。
「この先帰還困難区域 立ち入り禁止」
そう書かれた看板と柵の向こうに見える家々にも
震災前はそれぞれのご家庭の生活があったのだと思うと
やはり胸が痛みました。
2017年に避難区域が解除された富岡町では
いまだ8%しか住民の方々が戻っていない
厳しい現状があります。
双葉町でも今年度末には
一部の地域で帰還困難区域が解除されるとのこと。
今は入ることさえ許されない住宅の持ち主たちが
安心して生まれ育った町で暮らせる日まで
復興へ向けた取り組みは続きます。
大阪だって大阪が一番大切です
さて。
問題の処理水ですが、
結論で言えば
大阪湾に処理水を流すことは条件付きで可能である、
そう言えると思います。
なぜなら
通称ALPS(アルプス)と呼ばれる装置で
汚染水から危険なもの“多核種”を取り除いた
最近の処理水には
トリチウムという放射能物質以外は
ほぼ問題ないレベルまで取り除けているとのこと。
問題のトリチウムに関しても
まだ数値は高いながら、
たくさんの水で希釈することで
他の原発から(あるいは世界各地の施設から)
海洋放出されているレベルに
することができます。
ただ、福島第一原発内には今、
116万㎥の処理水が貯蔵されていますが
処理水を貯めはじめた頃は
海洋放出する云々の議論もないころ。
はっきり言って
初期の処理水には
トリチウム以外の有害物質も
いろいろ含まれているのだそうです。
なので、
そういった処理水は
再度ALPS(アルプス)で処理をして
多核種を除去してからでないといけません。
安全性が疑わしき処理水については
何度でもALPS・その他の処理を施すこと。
各数値のチェックは
東電側だけでなく
第三者の目も通すこと。
国民、特に漁業関係者に
十分な説明を行うこと。
処理水の運搬に関わる問題を
クリアにすること。
そのほかにも様々な条件が揃った上の
話にはなりますが、
海洋放出は決して非現実的な話ではなく
原発事故収束対応室が検討している
5つの処理方法
①地層注入
②海洋放出
③水蒸気放出
④水素放出
⑤地下埋設
費用面でも技術面でも
一番現実的なのではないかと
思われる方法です。
今、この瞬間も
処理水はどんどん増えていく。
今、原発敷地内に所狭しと並べられている
処理水用のタンクは977基。
リミットの137万㎡には
2022年末には達すると言われています。
タンクを増産して処理水を放置し、
年間の維持費用1500億円を
かけ続けることは
福島の復興にも影を落とします。
漁業関係者みなさまや
周辺住民のみなさまと
コミュニケーションをとりながら
実際の問題としてどう解決していくかを考え、
決断するときが近づいています。
先の大阪市長の発言には
周辺自治体の反発も出ましたが
希釈して放出するなら
過度な心配は必要ないということへの理解を広め
8つの海なし県を除く39都道府県で
協力して解決するのが
望ましいのではないかと考えます。
当たり前ですが、
大阪だって
大阪が一番大事なのです。
松井市長は
ほかのどの地域の市民のことよりも
大阪市民のことを考えている。
遠く離れた福島の処理水を
ぜひとも大阪湾に流させてほしい!
なんて、
切望している訳がありません。
なぜ松井市長が
「大阪湾への放出もあり得る」と言ったのか。
それは、
原発事故は福島で起きたことではあるけれども
日本全体の問題である。
福島の住民感情を考えれば
「福島のことなんだから
福島県内でなんとかしなさいよ」
と突き放すことはできない。
そう考えているから。
先送り政治から責任を負う政治へ
年金制度だって
先送り先送りにしてきたから
不安の声がこんなに大きくなるまで
だましまだし手をつけないできた。
この処理水問題も
先延ばしにすることで
メリットを得られる問題ではないことが明白です。
福島第一原発へとバスを進めている際、
敷地へ入るずっと手前から
処理水のタンクが見えていました。
入り口の間際にまで並べられたタンクに
今の政治の無責任さを
見たような気がしました。
周辺自治体で反対意見を述べる方々には
対案を出していただきたい。
反対するだけならば
小学生でもできるのです。
そして政府には
問題を直視して
逃げずに速やかに問題を処理していくための姿勢を
見せていただきたい。
それこそが”寄り添う”
ということだと考えます。
日本維新の会の国会議員メンバーは
先週に引き続き
本日10/7。
2回目の処理水勉強会を行います。
臨時国会も開幕し、
いよいよ問題を解決へ向けて進めるべく
どうアプローチしていくか、
梅村も先輩議員とともに
考えてまいります。
以下、
見聞きしてきたことをつれづれに。
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・原発の入り口に到達するまでにタンクが所狭しと並んでいるのがわかる。
・漏洩リスクの高いフランジタンクは溶接型に切り替わり耐久性がUP
・溶接型タンクの耐久年数は20年超。
・フランジタンクの一部はサブドレンから組み上げられた水が貯蔵されている(処理水よりもリスクが低い水)
・使用済みフランジタンクは解体されて原発敷地内のテントに保管されている
・タンクの下部には、万一処理水が漏れ出しても流れ出ていかないようにコンクリートの囲いで取り囲まれている。また、雨水なのか漏れ出した処理水なのかがわからなくなるといけないので、その囲いとタンクの間は雨よけのシートで覆っている。
・汚染水からセシウム・ストロンチウムを取り除いた処理水をストロンチウム
処理水という(約9万㎥)
・そこから多核種除去設備ALPS(アルプス)を通過し処理水はトリチウムを除く62核種の大部分を取り除いた水になっている
・ALPSは現在2045年に掘り起こして県外へ排出する=細野(当時)復興大臣
またかなりの予算が必要である。
・現場で働く東電職員さんは3600名。+協力企業などの人員およそ1000名。作業員に女性はいない。
・作業員ひとりひとりには年間の作業計画があり、放射線量も健康への影響を考慮して被爆シーベルト量を調節している。
・原発1〜4号機を取り囲む凍土遮水壁は必要に応じた温度管理やモニタリングを行い、地下水水位の確認もできるようになっている。
・国会議員団はバスに乗って3号機と4号機の間を通過するなど、放射線量の高いゾーンも通過しているが(車内でのふくそうは平服)被爆線量はトータル0.03〜0.04ミリシーベルト(←APDと呼ばれる個別線量計で計測)であり、歯医者さんでのレントゲン2回分程度とのことでした。
・燃料デブリの処理も大きな問題のひとつ。取り出し後に高レベル放射性廃棄物となる燃料デブリをどこにどう保管するのかと質問させていただいたところ「金属管に格納したうえでキャスクという特別な保管庫で貯蔵するか、放射線を外部に漏らさない特別なコンクリートで保管するかの選択肢があるが、設置場所は未定」とのことでした。
・当日現場で詳しい説明をしてくださり、質問にも丁寧にお応えくださったのは東電の廃炉コミュニケーションセンター副所長のKさん。もともと東京の方で事故発生当時は福島第2原発にて勤務。その後、第一原発にて廃炉へ向けたプロジェクトを担当。Kさんや作業員の方々が懸命に廃炉へ向けて取り組んでいらっしゃる姿を目の当たりにしていよいよ、いつまでも足踏みをしているわけにはいかないはずだと処理水など早急な問題解決の必要性を感じる。
・一方で、とある東電職員の言葉に疑問を感じた一面も。維新の会議員からの「大阪市長の発言についてどのように受け止めているか」という問いに「我々は事故を起こした立場。嬉しいということもなく困るということもない」というような回答でした。個人的にはその受け答えがどこか他人事のように聞こえ、事故を起こした立場であるからこその受け取り方はないのかと首をかしげました。
・1F(←いちえふ、福島第一原発の通称)
・1〜4号機は着々と瓦礫の撤去や燃料の取り出しなどがおこなわれていますが、未だ事故の爪痕生々しいエリアも多々残ります。汚染土を埋めるために巨大なすり鉢状の穴をつくっている現場、汚染土をベルトコンベアで運ぶための機械群。テントの中にうず高く盛り上がった汚染度の山。土がパンパンに詰められた無数の黒い土嚢袋。みどり豊かな双葉町と大熊町ではありますが、この町の日常は人々の生活感が消えた長期的な非日常です。
途中見かけた草をはむ野生イノシシや赤花そば花満開の畑に、事故前の本来の町の姿を垣間見たようでした。一日も早くこの町が元ののどかな町に戻るよう、まずは処理水の問題に維新の仲間とともに取り組んで参ります。
(埋められるのを待つ汚染土の山)